台風19号の被害を受けた神奈川県で、断水した山北町に自衛隊の給水車が支援に到着したにもかかわらず、何もできずに撤収する事態が起きました。
原因は限側の対応で、県が「要請手順が違う」事や「自衛隊要請の段階にない」との判断から支援を拒否したのです。
自衛隊に頼らず県で対応できるという姿勢から「県民の安全よりもメンツを優先させた」との批判の声が上がっています。
今回起きた事態の時系列や原因についてまとめます。
神奈川県が陸自給水車の支援を拒否し撤収
台風19号の被害を受けた神奈川県で、自衛隊の給水車が支援に到着したのに県が「待った」をかけて、何もできずに撤収してしまうという信じられない事態が起きました。
神奈川県山北町では断水が発生したため、町のエリアを担当している「陸上自衛隊駒門駐屯地(静岡県御殿場市)」に対して給水車を要請することを伝えました。
自衛隊は山北町に対して「県に依頼して、防衛相に派遣要請してもらうよう」伝えて給水車の準備し支援に出発しました。
山北町が県に事情を伝えて自衛隊に派遣要請をお願いするも、マニュアルの手順と異なることを理由に「待った」をかけます。
マニュアルでは「まず県や日本水道協会に支援依頼を行い。自衛隊への依頼は打つ手がない時の最終手段」だと言い、山北町の場合は「自衛隊を要請する段階にない」というのです。
自衛隊の給水車が山北町に到着するも、派遣要請が出ていないことからそのまま撤収することとなりました。
結局、県が別途手配した給水車2台は自衛隊撤収から約6時間遅れて到着します。
安全よりメンツ…台風19号で断水した町の自衛隊給水支援に神奈川県が「待った」
首都圏を直撃した台風19号。断水が発生した神奈川県山北町で、到着した自衛隊の給水車に、県が「待った」をかけ、水が捨てられるという信じがたい事態が起きた。
12日夜、台風19号は神奈川県を直撃し、山北町で断水が起きた。町は、約20キロ離れた駒門駐屯地(静岡県御殿場市)の陸上自衛隊に「翌日(13日)、給水車を要請するかもしれない」旨連絡していた。13日朝4時に、自衛隊から「県知事から防衛相に自衛隊の派遣要請をする必要があります。町は県に依頼してほしい。自衛隊としては、給水車3台を午前6時に出発させます」と連絡があった。
早速、町の防災課が県に依頼すると、マニュアルを盾に難色を示した。県のマニュアルによれば、自衛隊の派遣要請は、どうしようもなくなった時の最終手段だが、山北町の状況は該当しないというのだ。
給水車3台は午前7時少し前に町に到着。県と町で押し問答が続いたが、県は最後まで首をタテに振らず、給水車3台の貴重な水は捨てられた。結局、県が別途手配した給水車は2台で、到着も13日の午後と遅れた。
出典:日刊ゲンダイ
時系列:県・町・自衛隊のやり取り
今回の出来事を時系列でまとめました。
00:50 | [町]→[自衛隊] | 断水発生により自衛隊(陸上自衛隊駒門駐屯地)に派遣要請の可能性を伝える |
[自衛隊] | 自衛隊は派遣要請を受けることを前提に支援準備を開始 →早急に支援を行うため徹夜で準備 |
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05:00 | [自衛隊]→[町] | 支援への出発準備が整う 県に依頼して自衛隊へ派遣要請を出してもらうように伝える |
[自衛隊] | 派遣要請を受けることを前提に支援に出発 | |
05:30 | [町]→[県] | 県に対し自衛隊の派遣を要請 |
[県]→[町] | マニュアルと違うことから自衛隊への派遣要請を拒否 | |
[県]VS[町] | 町と県でのやり取りが続く 「まずは県や日本水道協会に支援を求めるべき」 「自衛隊はどうしようもなくなってから頼むもの」 「県で給水車が用意できるのでそちらが優先」 「まだ自衛隊に要請する段階ではない」 |
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07:00 | [自衛隊] | 自衛隊の給水車が到着 |
[町]→[県] | 自衛隊の給水車到着を県に伝える →後に県は聞いていないと主張 |
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08:00 | [自衛隊] | 派遣要請がないことから活動できず自衛隊の給水車が撤収 →町長は町役場で自衛隊員に謝罪 |
[県] | 県は別に給水車2台を手配 | |
13:00 | 県の給水車が到着(自衛隊到着から6時間後) ※渋滞があり到着が遅れる |
自衛隊が現場に到着したことについて町と県では言った・言わないの問題に発展しています。
原因はメンツ?マニュアル?
「町が県を差し置いて直接、自衛隊と連携したことが面白くなかったのでは?」「自衛隊に頼らず県だけで対応できると、県民の安全よりメンツを保ちたかったのでは?」との意見がありますが、原因は何だったのでしょうか。
神奈川県災害対策課は「県としては自衛隊が町に到着していたことは知らなかった」と述べています。
もしかしたら自衛隊がすでに裏で準備・対応していたことを知らなかった可能性もあります。
ただ町側は「自衛隊の到着を伝えた」としています。
県側が自衛隊に事前に要請していることを知っていて拒否したのかどうかは今後検証されるでしょう。
ちなみに「自衛隊災害派遣基準」には「自衛隊でなければ対処できない場合」という記載があります。
神奈川県の対応まとめ
神奈川県災害対策課の発言
今回の事態について次のように述べています。
町からの派遣要請の求めは断っておらず ”お預かりの状態” だった
県にも給水車がある。日本水道協会にもお願いしたのかと町に確認し、まずは県や協会に要請しましょうと町には伝えた。
それで足りなければ自衛隊に要請するのが手順。県としては自衛隊が町に到着していたことは知らなかった
「派遣要請を断っていない」の発言はさすがに無理があると思います。
「県で対応できる」「自衛隊に要請する段階にない」の発言はどう見ても断っているでしょう。
神奈川県知事の発言
神奈川県の黒岩知事は記者会見で、今回の事態について次のように述べています。
【Q】今回の判断は妥当だったと思うか?
【A】妥当だったと思います。
しかし一方では「柔軟に対応もできたはず」として町民にお詫びしました。
ルールに基づいた形ではなかったという事であっても、
現場で融通をきかせて近隣の皆様に給水をするといった柔軟な対応もできたと思う。
そういった意味では皆さんにお詫びしたいと思います。
ネットの反応
最優先すべきは「住民」
住民が欲しているならば、県なんぞどうでも良い
町と自衛隊が事前に準備してた上で町が県に災害派遣を要請したが、県の対応が悪くて自衛隊が追い返される形になっただけでしょ。
県のマニュアル通りの対応も分からんでも無いけど、臨機応変にしたら?
「お役所仕事」の典型。
ルールを守り税金を適切に使うのは役所の仕事だが、平時と緊急時は違う。
その判断ができないのであれば、上長に連絡し決裁させればよい。
自衛隊だけじゃない。
警察や消防、一般職員も一生懸命に災害に対応している。それを「ルールが違う」のお役所仕事で無下にするのはどうなのか。
お偉方は何を考えてるのかは分からんが、今この瞬間にも必死に働いている人達、そして助けを求めている県民を落胆させるような事はしないで欲しいと強く願います。
ルールとか手順とか色々立場上あるかもだけど、人命の危機など関わっている緊急時の時なんかははもっと柔軟に立ちまわっても良いと思う。
なぜ臨機応変に対応出来ないのだろうか。メンツ、それとも思想的なものかと勘ぐってしまう。神戸震災と一緒だ。まずは被災者の方々のことを思えば、あまりにもお粗末。
マニュアル通りって、そのマニュアルはあらゆる事態を想定しているのでしょうかね?どちらかといえば県は市区町村の上位に位置するのだから、まず県を通せという傲慢さを感じる。マニュアルは、その言い訳にしか聞こえないなぁ。
おまけに神奈川県でしょう?やっぱり、自衛隊に対して含むところがあるのかとも思ってしまう。
対応に問題ないという時点でアウト。
教訓としていかす気もなく、また同じことを繰り返しますってことでしょ。
プライドなんか要らない。うまくいかなかったら、それを認め、改善すべき。
最後に
給水車が到着しているのに水が配られないなんて信じられません。それも県民を守るはずの県が支援を止めているなんで考えられません。
県の給水車到着は6時間も遅れて到着しましたが、時期が違えば水分がとれずに熱中症で倒れる人が出てもおかしくありません。
マニュアル対応だけならロボットでもできます。緊急時こそ臨機応変に対応すべきだと思います。
人員不足などあったかもしれませんが、担当者は他の人に相談するなりして対応を考えるなるできなかったのでしょうか。
以上