「表現の自由」についての論争が再燃・加熱しそうです。
表現の自由について様々な議論を生んだ「国際芸術祭・あいちトリエンナーレ『表現の不自由展』」ですが、それに対抗する形で「日本人のための芸術祭・あいちトリカエナハーレ2019『表現の自由展』」が開催されました。
この企画をめぐる展示内容が物議を呼んでいますが、
とりわけ愛知県の大村知事の対応や発言が「あいちトリエンナーレ」と「あいちトリカエナハーレ」で真逆であることが「ダブルスタンダード(二重基準)」であると注目を集めています。
そんな大村知事の真逆な対応・発言についてまとめます。
※展示内容の良い悪いについては様々な意見があるため特ここでは述べません。あくまでも対応や発言が真逆であることに焦点を当てて記事にします。
両企画展の概要
「あいちトリエンナーレ『表現の不自由展』」の概要
表現の不自由展
【開催場所】愛知芸術文化センター(愛知県名古屋市東区東桜1丁目13−2)
【主催】あいちトリエンナーレ実行委員会
【補助金】補助金約7800万円を交付(現在は交付停止中)
企画展の経緯
- 8月1日から10月14日まで75日間にわたり開催
- 国内外から90組以上のアーティストが参加
- 展示内容に抗議(テロ予告や脅迫を含む)が殺到して8月3日で展示中止
- 10月8日に展示再開(抽選による定員制)
補助金の経緯
- 文化庁は4月に補助金約7800万円の交付を決定
- 愛知県の手続きの不備などを理由に補助金不交付を決定
- 愛知県は10月24日に補助金不交付を不服として申出書提出
「あいちトリカエナハーレ『表現の自由展』」の概要
表現の自由展
【開催場所】ウィルあいち(愛知県名古屋市東区上竪杉町1)
【主催】日本第一党愛知県本部
【補助金】なし(自費開催)
企画展の経緯
- 10月27日に開催
両企画展の展示内容
「あいちトリエンナーレ」と「あいちトリカエナハーレ」で問題視されている展示内容について一部を紹介します。
問題視されているのはごく一部で、すべての展示が問題視されているわけではありません。
「あいちトリエンナーレ『表現の不自由展』」の展示内容
<写真:関口威人氏(ジャーナリスト)撮影:Yahooニュース>
元慰安婦を象徴する『平和の少女像』
昭和天皇の肖像画が燃える映像『遠近を抱えて』
「あいちトリカエナハーレ『表現の自由展』」の展示内容
反韓:表現の自由展
韓国軍兵士の蛮行を表現する『ライダイハン像』
「犯罪はいつも朝鮮人」などが書かれた『かるた100連発』
大村知事の真逆な対応・発言
大村知事の両企画展へのスタンス【整理】
まず簡単に大村知事が両企画展に対して、現状どのようなスタンスでいるのかを整理しておきます。
表現の不自由展
文化庁が補助金約7800万円の不交付を決めたのは不当である。法的措置も検討する。
公権力を持つ立場の人が『この内容はいい、この内容はだめ』と言うのは検閲に当たる。
公権力が思想内容の当否を判断すること自体が許されていない。
表現の自由展
内容からして明確にヘイトに当たる、企画展の中止を指示すべきだった。
法的手段が講じられるのかも含めて検討する。
これら発言だけでも対応が真逆だということが分かります。まさにダブスタと言えます。
『反日ヘイトは良いヘイト』『反韓ヘイトは悪いヘイト』ととられても仕方ありません。
「あいちトリエンナーレ『表現の不自由展』」での大村知事の発言
あいちトリエンナーレ『表現の不自由展』の一連の騒動で大村知事がどのような対応・発言をしてきたのかを追っていきます。
河村名古屋市長が、少女像について「公的資金を使った場で展示すべきではない」と発言したことについて次のように述べています。
憲法21条に違反する疑いが極めて濃厚ではないか。
河村さんは公権力を持つ立場。
『この内容はいい、この内容はだめ』と言うのは、検閲ととられても仕方がないのではないか。
オーソドックスなのは事前検閲だが、事後検閲だってある。
さらに次のように説明を加えています。
公権力が思想内容の当否を判断すること自体が許されていない。
この内容は良くて、この内容はだめだと言うことを、公権力がやることは許されていない。
自分の気に入らない表現があっても、表現は表現として受け止めるのが、いまの日本国憲法の原則で、戦後民主主義の原点ではないか。
河村名古屋市長が市独自の検証委員会を設けて負担金を支払うか決めると発表したことについては次のように述べています。
作品がけしからんと検証するのなら『検閲』委員会になる。
大村知事は表現の自由をアピールする「あいち宣言」の採択を目指すとして次のように述べています。
今回の様々な結果、成果と反省を糧として、次の『2022』に向けて取り組んでいきたい。
トリエンナーレの教訓を生かし、表現の自由を守り、広げ、育てていく誓いとして宣言を作成する。
「あいちトリカエナハーレ『表現の自由展』」での大村知事の発言
あいちトリカエナハーレ『表現の自由展』で大村知事がどのような対応・発言をしてきたのかを追っていきます。
大村知事は記者会見で、展示内容はヘイトスピーチに当たるとして次のように述べています。
「内容からして明確にヘイトに当たると言わざるを得ない」
→憲法21条に違反する疑いが極めて濃厚ではないか
→『この内容はいい、この内容はだめ』と言うのは検閲
→公権力が思想内容の当否を判断すること自体が許されていない
→自分の気に入らない表現があっても、表現は表現として受け止める
「(展示内容が)分かった時点で中止を指示すべきだった」
→オーソドックスなのは事前検閲だが、事後検閲だってある
「法的手段が講じられるのかも含めて検討するよう指示した」
→作品がけしからんと検証するのなら『検閲』委員会になる
「こういう活動をされる方々は故意にやってくる」
「どう防いでいくかは正直言って難しい課題で、いろんな方から知恵を頂きたい」
→表現の自由を守り、広げ、育てていく誓いとして宣言を作成する
いかがでしょうか。同一人物の発言とは思えないほどに矛盾しています。
自身の発言に対して自身で真逆のことを言っているあたり、完全にダブルスタンダードです。
ネットの反応
戦争であまたの犠牲者を出した日本に対し 憎悪的作品を展示許可した 大村知事がまだ何か言いたい事でも?
公の場でもないし 公金で催したものでもないのに 知事の権力でどうするのでしょう。
まさか検閲ではないですよね。
「表現の自由」って言葉の意味を知事に教えてほしい。
人種差別を支持するつもりはないが知事の意見はあいちトリエンナーレの時と矛盾してる。
そもそもヘイトかどうかの判断は内容を見ないとできない。
内容面への言及すら21条違反ではなかったのか?
まぁヘイトでしょう。しかし先の不自由展との違いを明確に説明する責任がある。
両方がヘイト、あるいは両方が表現の自由ってのが中道の人。
そうじゃない人は偏った右左の方。
ほとんどの人が両方ヘイトだと考えると思うけどね。
あいちトリエンナーレの展示内容にもヘイトありましたよね、でも表現の自由だと今でも言ってますよね。税金まで出して。
トリカエナハーレの方は自費でやってますよ、文句あります?ヘイトというならあいちトリエンナーレも止めないと筋が通りませんよね。おかしいですよ。
随分と矛盾してますね。
これがヘイトならトリエンナーレもヘイトでしょう。
やっている事は同じなのに、どうしてこうも見解が異なるのでしょうか。
この人の頭の中はどうなっているんでしょうか。
「ヘイトでもアートなら大丈夫」と見解を出したのが愛知県知事とトリエンナーレ関係者でしょう?
そんなことだから左翼は老人ばかりになり、多くの人に受け入れられなくなっているのでしょう。
最後に
展示内容への考え方は色々あるでしょうが、大村知事の発言はあまりにも矛盾しているように感じます。
右左関係なく中道的に「表現の自由」を謳うのであれば、両企画展とも問題ないと判断すべきでしょう。そうでなければ偏っているとみられても仕方ありません。
何よりも名古屋市長に「公権力者が内容の当否を判断するのは検閲だ」と言っておきながら、今回の件にだけヘイトだと発言するのはどう見ても検閲行為でしょう。それも自費開催の企画展に対してです。
大村知事には是非とも公の場で、両企画展の表現の意自由の違いと、片方だけをヘイトと判断した根拠を示してほしいですね。そのうえで自身が発言したことへの矛盾について釈明を聞きたいです。
どれだけ素晴らしい人間でもダブルスタンダートは信頼を失います。
以上